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理事長挨拶

高校福祉教育のこれまでと今後

全国福祉高等学校長会 理事長 髙橋 秀親

学校法人東奥学園 理事長・学園長 東奥学園高等学校 校長
思えば時代が昭和から平成へ変わろうとしていた1980年代も終わり頃、福祉教育という言葉がにわかに現実味を帯び始め、日本の高校の中に「福祉」という新たな教育が生まれ始めた。その頃の福祉教育の根幹は『福祉教育=人間教育』というべきものであり、福祉をとおして生徒たちに『心』の醸成を求めていたものであったように思える。 1985年、文部省の諮問を受けた産業教育審議会では職業学科改善充実を図り、福祉関連事業人材育成のための高等学校「福祉科」設置の必要性が示され、その2年後には文部省初等中等教育局から「福祉科」設置の具体的提言がなされた。1986年頃から「コース」として産声を上げ始めた、全国十数校のバンガード的存在となっていた高校は、その後次々と学科として独立していった。当時の提言では、高校福祉教育の目指すタイプは“専門的職業人養成”と“社会福祉の理解を深める高等教育”の2つがあるとされた。その上で高校卒業後の進路等も考慮し、その両方の要素を含めた幅広い学習内容の実践が高校福祉教育のスタートラインに求められた。 しかし、1987年に制定された「社会福祉士及び介護福祉士法」により、介護福祉士が国家資格となり同受験資格取得が高校で可能となったため、全国で多くの高校に福祉科が誕生したのである。この頃になると高校福祉教育は、国家資格取得を受けて“専門的職業人養成”へとその学習内容は傾注されていき始める。そしてついに、1999年3月に改訂された学習指導要領に教科「福祉」が創設されたのである。高校福祉教育が、名実ともに日本教育界に認知された瞬間であった。以降、全国に設置される高校福祉教育の環境は、国家資格取得に向けた“専門的職業人養成”は勿論のこと、普通教育で教養としての福祉を学べるコースや系列等が次々と誕生し、高校福祉教育は急速に多様化していった。 それから30年以上が過ぎた今日まで、高校福祉教育から巣立った多くの優秀な人材は、日本の高齢化に伴う福祉行政を下支えしてきたことは誰も否定できない。その間、法改正による苦難を経てもなお高校福祉教育がその意義と存在を失わず、日本の福祉行政に大きく貢献していることは、全国で若い人材育成に邁進している数多くの高校福祉教育に携わる関係各位の賜であることに間違いはない。 令和4年度から全面施行される新学習指導要領下でも“人間の尊厳に基づく地域福祉の推進と持続可能な福祉社会の発展を担う職業人として必要な資質・能力を育成する”ことを高校福祉教育の目標と位置付けており、これからの日本の福祉を担う人材育成を担う一つの大きな柱となるべきものであることを、高らかに謳っている。これからも私たちは迷うことなく、高校福祉教育に誇りと信念を持ってその職務にあたらなければいけない。全国の高校福祉教育に携わる全ての人が、共に手を取り合い・・・
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