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福祉科の沿革

全国福祉高等学校長会の歩み(沿革)

全国福祉高等学校長会

1.はじめに

「全国福祉高等学校長会」は、平成7年4月に「全国高等学校長協会家庭部会福祉高等学校長会」として発足し、平成18年4月に現在の「全国福祉高等学校長会」となった。高等学校での「福祉教育」は、昭和60年代から始まったが、これまでの高等学校での福祉教育推進の道のりと福祉校長会の歩みについて以下に記す。

2.福祉科の設置と福祉教育推進の道のり

(1)昭和60年2月に文部省(当時)「理科教育及び産業教育審議会」において、「高等学校における今後の職業教育の在り方について」の答申が出され、教科「福祉」の設置の提言がなされた。一方、昭和62年5月には「社会福祉士及び介護福祉士法」が公布され、社会福祉士及び介護福祉士が国家資格として位置づけられ、高校福祉科を卒業することにより介護福祉士国家試験が受験できるようになるなど、高等学校の教育においても福祉が導入されていくきっかけとなった。また、同じく昭和62年6月には、文部省(当時)の委託によって行われていた「産業教育の改善に関する研究」の研究結果報告が出され、「福祉科」について、福祉科として専門的な職業人の養成を目指すタイプと社会福祉関係の高等教育機関への進学を目指すタイプ、科目の種類・内容を示し福祉科設置の具体な提言がなされた。この頃から、全国に福祉科を設置する高等学校が誕生し始めた。

(2)福祉科を設置する高等学校が増える中、平成7年4月に「全国高等学校長協会家庭部会」の中に福祉高等学校長会が設けられ、福祉校長会としての全国的な組織づくりに入っていった。そして、そのような中、平成7年10月に「福祉校長会」として第1回の理事会、総会・研究協議会の全国大会が静岡県で開催された。

(3)平成10年7月の文部省(当時)の「理科教育及び産業教育審議会」において、「今後の専門高校における教育のあり方等について」の答申が出され、その中で、高等学校における介護の人材育成のためには、従来の教科の枠組みの中では十分に対応できず新たに教科を創設し教育内容の充実を図る必要があるとされ、更に人材育成のため専門教科に関する教科「福祉」を新たに設ける必要がある、との提言がなされた。それを受けた教育課程審議会の答申を踏まえ平成11年3月に高等学校学習指導要領が改訂され、教科「福祉」が職業に関する専門教科として創設された。また、それに伴い平成13年3月に「教育職員免許法」が改正され、平成14年度までの3年間で、専門教科「福祉」担当の教員の養成のための現職教員等講習会と資格認定試験が実施され、約1700名の教員が教科「福祉」の免許を取得し、平成15年度から、専門教科「福祉」が学年進行により実施されることとなった。

(4)平成18年4月、福祉教育の独自性と専門性を高めるため、また、加盟校が200校を超えるなど規模が拡大してきたことから、「全国高等学校長協会家庭部会」から独立し、「全国福祉高等学校長会」となった。以来、本会では講演会や講習会を開催し、福祉担当教員の資質の向上に取り組むほか、生徒の学習意欲を高めるため「生徒体験発表」や、全国産業教育フェアにおける「介護技術コンテスト」を開催する等、福祉教育の振興に努めている。

(5)今後ますます増えるであろう認知症のケア等は、身体介護にとどまらず心身の状況に応じた介護や相談援助が必要となることから、それに的確に対応できる人材の確保と資格の取得方法を一元化するため、平成19年に「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正が行われた。この法改正により、高等学校での福祉教育も大きく変わった。教育カリキュラムの単位数が増加し、その教育内容も大学、専門学校と同等となり、また、教員も「介護福祉士(看護師)」の資格が必要となった。また併せて、「介護福祉士」の養成施設としての文部科学大臣及び厚生労働大臣の指定を受けることとなった。

(6)平成21年3月、高等学校学習指導要領が改訂され、「福祉」については、少子高齢化の急速な進展に伴い、地域における自立支援への志向や福祉ニーズへの多様化など社会福祉に対する国民意識の変化に対応し、多様で質の高い福祉サービスを提供できる人材を育成できる観点から、介護福祉士の資格等にも配慮して内容等の改善が図られ、介護福祉士の養成施設として指定を受けた高校については、平成21年度からこの教育課程が実施されることとなった。

3.福祉教育の課題

高等学校における福祉教育では、生徒に対して福祉マインドを身に付けさせることを重点に置くことを目的にしているが、その他に、高校在学中に介護に関する資格を取得させ、卒業後は、社会で福祉の現場での即戦力となるような福祉に携わる人材の養成を目指している。 「全国福祉高等学校長会」加盟校約200校の内、110校が国家資格である介護福祉士の養成校として文部科学大臣及び厚生労働大臣の認可を受けて福祉教育を行っている。 現在、介護福祉士の資格を得る方法は

の三つのルートがある。平成19年の「社会福祉士及び介護福祉法」の改正では、平成24年度から資格取得の一元化(全てのルートにおいて国家試験を課す)をすることとなっていたが、「介護の人材確保が困難」との意見もあり施行が延期され、平成29年度(5年の経過措置あり)に先送されることとなった。2020(令和2)年には付帯決議はついたものの一元化は更に延長となった。団塊の世代が75歳以上になる2025年度(令和7年度)には、現在より約30万人多い介護に携わる人材が必要になると試算されている。そのためには、毎年約6万人の介護に携わる人材を養成していかなくてはならないということと介護福祉士養成校において外国人留学生の介護福祉士資格取得を有利に進めたいということが、延期となった理由といえる。厚生労働省では、介護分野の深刻な人手不足を補うため、介護職の資格要件を緩和するなど人材確保に取り組んでいるが、このような状況の中にあっても、高等学校の福祉科では平成19年の法改正による制度改正に基づき福祉人材の養成に取り組んでいる。 平成19年の法改正以前は、高等学校の福祉科で国家試験を受験する学校数は現在の倍以上であったが、法改正後は厳しい要件の中で受験校も110校となった。福祉系高等学校としては、①及び②の国家資格取得ルートと比べると不公平感はあるものの、法改正前と法改正後の国家試験の受験について考察すると、介護福祉士国家試験の合格率では、法改正後の新しいカリキュラムの下での学習と高校3年間での59日以上の介護実習を経ての受験から、合格率は非常に高いものとなった。

就職の状況では、法改正後の新カリキュラムでの学習により専門性が高まったことと、大幅に増えた介護実習により施設現場の理解が深まったことで、即戦力として従事できる福祉関係への就職率が高くなった。また、進学においても、高校で福祉を学び、介護の専門職としてのしっかりとした土台作りができることにより、社会福祉士等の、より高度で専門的なステップアップを目指して福祉関係の大学や専門学校等への進学を目指す傾向が見られるようになった。

4.福祉高等学校長会が行う諸事業

「全国福祉高等学校長会」では、毎年夏に「総会・研究協議会・福祉担当教員等研究協議会」を開催しており、令和元年度で25回目を重ねている。そこでは、文部科学省、厚生労働省の関係官より「基調講演」や研究協議における「指導・講評」を、また、著名人による福祉に関係する「記念講演」を行うなど、担当教員の資質の向上に努めている。また、生徒には、「生徒体験発表」「高校生介護技術コンテスト」の開催、さらには、平成27年度より「社会福祉・介護福祉検定」を行うなど、福祉を学ぶ生徒達の意識を高めると同時に、福祉に関する知識及び技術の向上を図っている。

5.おわりに

全国福祉高等学校長会では、これまでの福祉人材の教育に加え、卒業生を受け入れていただいている地域の施設の方々に役立つ福祉の人材育成に努めていきたいと思っている。また、少子高齢化の進展する日本の介護を支える人材確保のため、全国福祉高等学校長会では日本の未来に貢献していきたいと願っている。

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